今回は少しマニアックな話題です。
堅い内容ですが、築20年以内の中古戸建てを探している方はぜひ注意して頂きたい内容なので、頑張って続きをご覧ください。

■国の制度「住宅性能表示制度」

住宅の品質を示す仕組みに「住宅性能表示制度」というものがあります。
これは《住宅の性能を評価し、表示する》ための基準や手続きを定める、法律に基づいた国の制度です。
たとえば、新築の広告などを見ると、「耐震等級3」とか省エネルギー対策等級「4」の表記を見ることがあります。この「等級〇」が、まさに住宅性能表示制度による表示なのです。
この制度によって、住宅性能に関するルールが共通化されました。ちなみに管轄は国土交通省です。評価そのものは、国に登録されている第三者機関によって行われています。

さて住宅性能評価というと、完成時だけに行われる評価だと思われがちです。
実際のところは、設計図の評価・施工完成段階の2種類があり、評価後はそれぞれの評価書が発行されます。
1.設計住宅性能評価書(設計図の評価結果)
2.建設住宅性能評価書(施工・完成段階の検査)

買い手側にとって「評価書」といえば、施工完成後の評価にあたる建設住宅性能評価書(上でいう2番)との認識が一般的ですが、売り手側にとっては設計図ベースの評価書となる設計住宅性能評価書の事を言っていた、という、ズレが生じるケースがあります。
この両者による「評価書」のズレに気づかずに話が進んでしまうと、潜んでいた性能差に後から驚かされる事態があり得ます。それはどういった事なのか、次の章でご説明します。

<参考>一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/index.php

■耐震等級3「相当」という謳い文句

住宅性能表示制度がスタートした平成12年頃、漏れなく制度が利用されていたか振り返ると、全くそうではありませんでした。
当時の事業者は、高い性能を実現するための工事費が高くなる、評価書取得に追加の費用がかかってしまうといった説明で、建築住宅性能評価を割愛していたり、また設計住宅性能評価も行わなかった…という話が聞かれています。

新築戸建てやマンションについては、住宅性能表示制度の利用が必須ではなかったことから、利用が徹底されなかった、というわけです。
実際のところ、制度利用にあたっての図式(スキーム)が実務とマッチしていなかったため、不確定要素はなるべく排除したかったという本音も事業者側にはあったようです。

※事実その後に始まった長期優良住宅という制度では、建築に対して補助金が利用できたため、積極的に利用した事業者がたくさんいました。
このような理由から「制度は存在するものの、実際の利用が伴わない…。」そんな状況が生まれ、現在の”耐震等級3「相当」”という謳い文句に繋がっていくわけです。
耐震等級3相当の設計は行ったものの、性能表示をするための「評価制度」を利用しなかった。そんな物件がこの時代に生まれていたのです。

■世の中に出回る耐震等級3「相当」

制度開始から約20年を経て、当時竣工した ”耐震等級3「相当」”という物件がそろそろ中古物件として流通市場に出始める頃合いになりました。
実際に住宅性能評価書を確認してから不動産広告に表示している物件であれば良いのですが、評価書の存在を確認しないまま、売主様の言い分だけで「耐震等級3」と謳っているケースが懸念されます。
買主様にとっては、架空の耐震等級3が流通し得る、ということになるからです。
設計書の時点では「耐震等級3」のものを計画していた。けれども、実際に建築時はどうだったのか?
竣工から既に数10年経った今では、評価書の存在だけが大きな頼りになります。
各種制度でメリットのある住宅性能評価書は新築時に取得していないと後から簡単に発行できるものではないだけに、大きな信頼性があります。

住宅性能評価は、先にお話しした「設計性能評価」と「建設性能評価」があり、実務では、施工時に数回評価機関による現地確認を行わないと評価書が発行されない仕組みです。
新築時にそのプロセスを踏まえなかった住宅は、後からやり直しすることができないため、耐震等級3「相当」の住宅は、当時のビルダーが耐震等級3「相当」と言っていただけの普通の住宅となるわけです。
※長くなるので割愛しますが、中古住宅の性能表示制度というものもありますが、こちらも現時点では現実的とは言えません。
購入判断材料として「等級〇」を確認した時は、不動産売買契約を締結するまでに、評価書が実在するか確認してもらった方が良いです。

住宅性能評価書はメリットが多い

このように信頼性の高い、住宅性能評価書のある物件は、中古住宅でも様々なメリットがあります。
フラット35を利用する場合は新築と同じレベルの金利引き下げが受けられますし、地震保険を利用する場合は保険料が大幅に割引となります。(等級2で30%、等級3で50%)
また、売却する際にも、住宅性能評価書がある・ないでは、買主様の反応が変わってきます。
ましてや「ある」としておきながら「評価書が実在しない」となれば、トラブルに発展するのは言うまでもありません。

まとめ:耐震等級3相当は、耐震等級3と完全一致しない

今回のテーマでは、不安を抱かせてしまう内容がありましたが、不動産広告に耐震等級3の記載がある物件は、評価書の有無を実物で確認することが大切。ということにお気づき頂ければ、もう大丈夫です。
耐震等級3の物件は、本当に評価書が揃っていれば、買主様にとって「良い物件」です。
実際に取引を進めても、いつまで経っても評価書が出てこない。そんな困った場面に出会わないよう、ぜひお気をつけください。紛失したケースもありますが、そもそも評価書を取得していなかった、というケースもあり得ますので。。。
なければ無いなりの、売り方・買い方があります、ぜひ不明点を晴らして満足いく売買を進めてください。
※2018年4月の改正宅建業法で重要事項説明書の中に住宅性能評価書の有無を記す箇所が追加されていますが、契約時にはいつもの癖で「なし」としてしまう不動産会社もいるようです…。
売主様も当時の事業者に丸め込まれて、耐震等級3相当の設計だから、実際に評価書を取得していなくてもそれほど問題ではないと思い込んでいるケースも考えられます。

■「等級〇」は大きい数字がより優良住宅

最後に、住宅性能評価がどんな観点で行われているか、少し堀り下げて終わりにします。

これは住宅性能表示制度で評価される10分野です。
1. 地震などに対する強さ(構造の安定)
2. 火災に対する安全性(火災時の安全)
3. 柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)
4. 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)
5. 省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)
6. シックハウス対策・換気(空気環境)
7. 窓の面積(光・視環境)
8. 遮音対策(音環境)
9. 高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
10. 防犯対策

「耐震等級」の等級は1から3の3段階に分かれます。
耐震等級1と建築基準法は同じ強さ。
耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の地震に対して抵抗できる強さ。
耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の地震に対して抵抗できる強さ。

ここで誤解を生じやすいのは「家の強さが1.25倍・1.5倍」ということではなく、「地震の強さに対する抵抗」が1.25倍、1.5倍という点です。
耐力壁の量で言うと、等級2は建築基準法の1.55倍以上の耐力壁が必要で(軽い屋根の場合)、等級3は1.86倍以上の耐力壁が必要となります。
※実際には耐力壁の配置や地域によってさらに必要な場合があります。
要するに、耐震等級3の家は相当強いと言える訳です。

実際に、耐震等級3が求められるのは消防署や警察署といった建物で、一般家屋は耐震等級1だと考えると、より耐震等級3の手堅さが伝わるでしょうか。

少しだけPRさせて頂くと、当社(フジハウジング)の注文建築は、地震に強い耐震等級3を採用しています。建設業界で一般住宅の場合に通常省略される、木造住宅の構造計算も行っていて、地震に強い家づくりを進めています。ぜひご興味があればお声がけください。